コンサルタントの本音

目指す組織状態を明確にする

2018年3月

前回「進化と退化」で、『変化に先んじ対応しないことは退化である、進化には自らのアイデンティティを基盤に周りのものを変えて行くことだ』と説いた。組織変革でも、自らの存在意義を明確にすることは重要であるが、もう一つ大事なことは、どういう組織のあり方を目指すのか、ということである。

品質学ではクロスビーが組織の成熟度を示し、成熟度が高いほど品質が良く、業績にも良い影響を与えるとした。それをベースにマルコム・ボルドリッジ国家品質賞(※1)では、組織の成熟度を評価し、高い成熟度の組織は顧客満足、社員満足、地域貢献、業績のすべてのパフォーマンスが高いとし、大統領賞を授与した。最近では「ティール組織」(※2)という書籍で組織の発展段階を紹介している。

これらの考え方はすべて、組織の状態には発展段階があることを示している。例えば、クロスビーの成熟度は5段階。マルコム・ボルドリッジ賞は10段階、ティール組織では7段階である。つまり、組織を変革するとは、今はどういう組織状態で、それをどういう組織状態にするのかということである。それに合わせて変革の方法を適用することが必要である。

組織の発展段階を規定するものは、人々の意識や思考、リーダーの意識やリーダーシップのあり方、情報や意思決定の流れ方、コミュニケーションの方法、業務プロセスのあり方、行動の振り返りとその活かし方、誰が何をどう評価するのか、行動習慣などである。これらは相互に関係があり、それらの関係性の中で組織状態の段階が決まってくる。いわば組織のOSのようなものだ。

どのようなモデルを活用するとしても重要なのは、今の組織状態と目指すべき組織状態を明らかにし、目指すべき組織状態に一歩近づくにはどのような組織状態を目標にするのかを明確にし、施策を打っていくことだ。そしてその状態をたえず振り返り、レベルをあげていく。指示型リーダーシップを発揮している組織が自立型の組織には一足とびには向かわない。例えば、人の成長も重視するリーダーシップを経て、指示と権限移譲のバランスを取る組織に成長してから、自ら考え行動する組織に向かうといった段階を踏んで組織を変革していく。その際にはサーバントリーダーシップ(※3)的な要素が強まるだろう。

研修や育成においても、このように組織変革の階段を登るプロセスを意識しながら、マネージャーやリーダーの育成とその研修のプログラムを考え実践しないと変革に貢献できない。特にリーダーの意識や組織における慣習を変える部分が重要になってくる。目指す組織状態に一歩近づくためのリーダーシップ、リーダーの意識のあり方とは何か、それを無視した変革はありえない。そして、それは段階に応じたものになっているのである。

※1マルコム・ボルドリッジ国家品質賞:1980年代にアメリカ企業の復活をかけて国で作られた表彰制度。経営トップの考える視点を基準に、それに沿った経営をドキュメント化し、審査員に評価され、優れた組織は大統領から表彰される。審査員からのフィードバックレポートはコンサルティングより価値があると定評。日本では日本経営品質賞として運営されている。

※2「ティール組織」フレデリック・ラルー著 英治出版

※3サーバントリーダーシップ:支援しながら人を導くリーダーシップのこと。支配統制型のリーダーシップの対比として使われる。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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