コンサルタントの本音

教養とリーダーシップ

2017年7月

経営幹部育成はMBA(Master of Business Administration 経営学の修士)の先を考えなければならない。既にエグゼクティブエデュケーションでは、通常のMBAのプログラムに加え、コーチングをつけて、健康や精神的な維持・成長を目指す内容がプログラムに含まれている。さらに、リーダーシップとして自分のあり方を深く問いかける時間を取り入れるようになってきている。

その背景にあるのは、大きな組織の経営を任されたり、新しい事業を立ち上げたりするには、これまでのあり方から自らを変革する必要があるからである。大企業の経営や、新規事業の立ち上げは、これまでの延長線上で実現できるほど甘くない。特に、上司の指示の基で仕事をし、引き上げられていくことが多い組織では、そこから次の経営者がなかなか出にくいと言われ、昨今の日本企業の衰退の要因の一つとして多くの識者から指摘されている。

これからの経営者に求められるのは、ハートの部分での変革や目覚めである。前回のNLPで言うと、自己認識をどうするのか、ということである。この事業を通じて、自分は何をしたいのか、心の底から実現したいものは何なのかを本気で考え続けなければ、経営者として一皮剥けない。また同時に、そこにブレないしっかりした軸を持たなければ、そのときどきの問題に対して事実前提型の対処療法的な経営となり、結果的にじり貧の結果を招く。

ハートの部分での変革や目覚めを呼び起こすのは、未知の状況に遭遇した時に、その状況の本質を深く理解し、これを契機に飛躍しようとする意識である。そのためには、今までにない経験をしたり、今までにない考えを組み入れてみたりすることが重要である。そして、その基盤になるものの一つが教養である。もともと、トップ同志の話し合いでは、歴史や哲学やさまざまな学問の知識が基になってお互いを深く理解し合っていくことがよくある。その点で日本の古典や中国の古典を理解している日本人は西洋人の幹部から尊重されるが、そうでないと見向きもされないというケースが見られるらしい。そのため、日本のエグゼクティブエデュケーションでは、教養を身につけるための知識習得のプログラムを取り入れているケースも多い。

だが、お互いを理解するだけで終わったのでは単なる知識のひけらかしである。その知識、教養から時代やさまざまな要素への新しい視点を持ち、これからの自分の行動を意味づけるからこそ意味がある。自分は何のために経営者になり、事業を発展させるのか、その深い自己理解なしに、変革の時代に求められる経営はできない。単なる知識や教養を身につけるだけではないリーダーシップの育成のあり方が問われているのではないだろうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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