コンサルタントの本音

◆ビジネスモデル

2014年6月

最近、一部の格安航空会社LCCのパイロット不足が報じられているが、参入時の競争環境が変化してきているということだろう。これまで大いに健闘してきたLCCだが、今後は改めてビジネスモデルを再検討していく必要があるかもしれない。しかしながら、LCCの躍進は、市場参入の際のビジネスモデルの重要性を喚起した。

ハーバード大学教授のマイケル・ポーターは、「どの市場に参入するかで収益が変わってくるため、その市場や業界を分析した上で参入の検討を行うことが重要であるとし、5フォースモデルというツールを紹介した。分析を深めて行くと、参入しても良いリターンが得られそうにないという結論になることも多々あるが、あえてそこに参入し収益を上げている会社もある。LCCもその一例で、誕生当時の航空旅客市場を見る限り、世界中の航空会社がしのぎを削って市場を奪い合い、その結果、競争に敗れて撤退を余儀なくされた航空会社も出ていた中で、LCCが新規参入してもとても収益をあげられるとは思えないように見えた。

では、なぜLCCは成功したのであろうか。彼らは、ターゲット顧客や顧客に提供するサービス、利益を得る方法、実現のためのプロセスやシステムを全面的に見直し既存の航空会社と徹底的に差別化することで、競争を優位に運んだのである。ひとことで言うと"ビジネスモデルによる差別化"であり、異なるビジネスモデルで寡占状態にあった市場に打って出て、ユーザの評価を勝ち得たのである。

このように、最近は事業検討に際してビジネスモデルを検討することの重要性が高まっている。同時に、一昨年日本でも紹介された「ビジネスモデルキャンバス」の活用により検討のし易さも増した。プロトタイプを重視するデザイン思考の普及もあって、ビジネスプラン作成のプロトタイピングとして活用するケースが増えつつある。

こういうツールは、知っている、理解している、といったレベルでは全く意味がない。具体的に使ってビジネスの可能性を高めていく能力が重要になる。従って、キャンバスに事業アイデアを書いては、それを基に顧客・市場、パートナーに問いかけ、仮説の妥当性を検証し、修正する。修正したものを改めて現場で確認する、ということを繰り返し行いながら実現性を高めて行く必要がある。また、アイデアをビジネスモデルとして見える化し、仲間やパートナーを増やして資金の獲得を進める必要もある。

ビジネスモデルキャンバスを、事業検討を進める上でのチェックリストとして使うという考え方もあるが、それではさびしい。ビジネスモデルキャンバスで定義する9つの要素がどのように関係付けられ、ストーリーとして展開できるかといった観点で検討することが望ましい。ビジネスモデルは一つのシステムである。従って相互作用のあり方を見出すところに意味がある。

ビジネスモデルをテーマにした研修についても同様のことが言える。ビジネスモデルの書き方を教えるだけでは意味がない。モデルをブラッシュアップした上で、実際にビジネスプランを作成し、それを事業として検討するプロセスの中で、ツールを使えるようにすることが重要である。

ツールをうまく活用し、成功の可能性を高めるには研修と実務をつなぐプロセスの設計が必要である。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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