T氏のすべらないコラム

◆言葉も世につれ

2012年12月

今年は何かと指名手配写真が話題になり、「おい、小池!」も見つかった。見つかったといっても、身元不明の死人の指紋を照合したら「おい、小池!」と一致したということだ。
指名手配写真に特段注目しているつもりはないが、派出所等で見かけるとキャッチコピー?にインパクトがあったせいか妙に目についた。かつてフジテレビが「ビルマの竪琴」を映画化した時、予告CMの決め台詞が「水島、一緒に帰ろう!」だったため、全国の学校で水島という名字の生徒が下校時間になるとこれをやられてうんざりしたそうな。「おい」などという呼びかけは帰宅時以外にも使えるから、この手配写真で全国の小池さんがさぞ迷惑を被ったことだろうとお察しする。

そんな手配写真を貼っている場所の派出所巡査で最も有名なのは「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の両さんこと両津勘吉だろう。今や銅像にもなったこの巡査、1976年連載開始時の設定では太田裕美ファンということになっている。
その太田裕美の歌に「ひぐらし」というタイトルの曲がある。男女のカップルがバス旅行に出かけるストーリー仕立ての内容だが、曲中「アイツを見ろよ。3億円に似てないか?」という歌詞(作詞:松本隆)がある。3億円といえばもちろん金額で人に似ようはないのだが、ここで言っているのは犯罪史上名高い3億円強奪事件犯人のモンタージュ写真のことだ。ちょうど時効間近で手配写真のメディア登場が事件発生時に劣らず多かった時期の曲である。「3億円」という言葉が手配写真の顔を意味していたというわけだ。

「3億円」は特殊事情だろうが、普通の言葉の意味も時代によって変化する。
「大丈夫」という言葉の遣い方も最近は変わってきて、例えば異性に交際を申し込んで「ダイジョブです」と言われれば、お断りの意味になる。間違って all right の意味にとればストーカー扱いされそうだ。

「電話」も携帯電話の登場で従来の電話は「固定電話」と呼ばれるようになった。英語でも同様で、telephone では済まなくなり、「固定電話」は landline と言われるようになった。
また、郵便の mail は people や family と同じく集合名詞(複数扱い)で、本来は郵便配達人が提げている鞄の中身(封書やハガキが複数入っているから集合名詞)を表す言葉だったが、電子メール email の普及で単に mail というだけでは済まなくなり、前時代的というわけで classic mail あるいは届くのが遅いことから snail mail (カタツムリのメール)などと言われている。
国を問わず「言葉も世につれ」のようだ。

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. 3億円事件を題材にしたTVドラマ「悪魔のようなあいつ」の主題歌は?
  2. 映画「初恋」で3億円事件犯人を演じたのは?
  3. 「ひぐらし」の作曲者は(当時は旧姓、別名「呉田軽穂」)?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ページの先頭へ戻る