コンサルタントの本音

グローバル人材

2017年9月

グローバル人材の養成が急務と言われて久しい。グローバル人材を養成するには、まずグローバル人材とはどういう人材なのかという定義が必要である。ある本を読むと、「英語ができて、コンピュータが使えて、外国の取引相手とタフな交渉ができて、1日15時間働けて、安い賃金に文句を言わず、辞令一本で明日からでも海外の工場や支店に飛んで行ける人間のことをグローバル人材という」と書かれてあったりする。確かにそういう人がいれば経営者や上司はうれしいと思うが、時代遅れも甚だしいと感じる。どうもこの定義を読んでいると、昔のテレビコマーシャルさながら24時間働き続けるジャパニーズビジネスマンのイメージが思い浮かぶ。今の企業経営者はそんな人材を求めていないと思うが、組織の採用・人事制度・処遇のあり方は、もしかしたら上記のような人材が今でも一番評価されているのかもしれない。

では、どういう定義が良いのだろうか。定義を深く考えるには、要件を否定してみるとよい。英語ができないとグローバル人材ではないのだろうか、コンピュータができないとグローバル人材ではないのだろうか、という風に考えてみるのだ。そうすると、外国の取引相手とタフな交渉を母国語以外でできることぐらいしか否定されると困る要件はないように感じる。むしろ効率的に動く、高い給料を求める、自分の仕事や環境にこだわる、上司の一言で簡単に動いたりしないといった人の方がむしろグローバル人材っぽい。

また、不足している定義はないだろうか。あるとすれば、「組織で成果を出す」ということではないだろうか。個人の力には限りがあるので、組織を束ねて大きな成果に結びつけるリーダーシップが求められる。企業にはそれぞれ組織としての強みがあると思うが、それを異なる文化の中でいかに発揮させることができるかが問われることになる。

もう少し細かく定義すると、「日本人(同国人)以外もいる組織で、互いの役割を理解し、異なる文化・商習慣の地域で、その組織の強みを有効に機能させ、事業を進め成果を出すことにリーダーシップをもって貢献できる人」という定義になるのではないか。

技術としての英語力や交渉力、知識としての異文化・商習慣、行動要件としてのリーダーシップは研修で教えられる。しかし、それだけではグローバル人材の要件を満たした人材は育てられない。リーダーの胆は、知識と経験をつなぎ合わせ、実践してきた経験から学んだことを基に組織の強さを有効に活用できるような方向性を明確にすること。メンバーに対して、今何をすべきかを深く考えさせ、自分の限界や壁を作らずアグレッシブに行動することを促すことである。

こういった定義に沿って実際にグローバル人材を養成して行くには、実践の場も必要であるし、評価の仕方も変える必要がある。そして、採用、適材適所、異動、評価、処遇などさまざまな仕組みが有機的に統合されていることが必要になるのではないか。また、ローカルの人材も含めて企業の価値観を共有化することや、組織固有の強みをグローバルに展開するためのマネジメントシステムなども必要であろう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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