コンサルタントの本音

◆社内課題の解決と社会課題の解決

2016年10月

現在、働き方改革について盛んに議論されているが、いまだに日本では長時間労働で成果を出すというスタンスから抜け切れていない。長時間労働にも質がある。裁量権があり、高い質の仕事を長時間行うことで、他に抜きん出ることも必要な仕事はある。問題なのは、ムダな仕事、やったほうがいいけどあまり価値のない仕事まで含めて長時間労働を強いていることである。

削減したつもりでも、まだまだムダのある仕事の仕方をしているケースは多い。意思決定を先延ばしする経営者のもとでは、意思決定までに膨大な情報の収集や度重なる資料の作成、整理に加え、情報共有のために多くの人を巻き込んだ会議など、結論の先送りによってムダな時間がどんどん累積されることになる。スピードが勝負を決めるといっているのに、意思決定がないまま、あらゆることを同時に現場に要求し、その結果、活動がスタックして成果が出ず、そのためにまた報告を求めるといったプロセスのムダ。計画をおろそかにし、走りながら考えるという名のもとにミスや後戻り作業が大量に発生するムダ。必要量のICT投資をしないため、中途半端なシステムを構築し、結果的に人の手間がかかるムダ。等々、あちらこちらにムダは発生している。

ムダが多いのだから、世界的に見ても高い賃金水準に見合うだけの生産性や成果を発揮できていないという指摘があるのも道理である。ムダをなくせば、価値を生む仕事に集中することができる。その結果、生産性が高まりより高い成果につなげられれば、必ずしも賃金が高いことが課題にはならない。そうなれば、短い時間しか働けない女性や高齢者にも仕事を持つことができ、少子化対策にもなる。

重要なのは、長時間労働をなくそうという議論から、ムダをなくそうという議論に早く移り、本当に意味のある仕事なのかどうかを検証する時間を取ることである。そのためには、上司の要求にはすべて応えなければならないという関係性から脱却し、何をすることが重要なのかを話しあえる自立/自律した組織を作り上げることに目を向けることが必要である。

企業はさまざまな社会課題を解決することでビジネスチャンスを広げようとしているが、そのためにはまず、社内課題=仕事のムダに目を向けて改善することが大切ではないだろうか。社内課題の解決が社会課題の解決につながり、事業の発展にもつながっていくのではないだろうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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