コンサルタントの本音

◆予算と計画

2016年9月

さまざまな企業のコンサルティングを行っている中で、同じマネジメントなのにずいぶんと企業によって運用が違っていると感じるものがある。その代表的なものが予算である。予算は目標と計画から成りたっている。目標を立て計画を作り、実行して成果を出すことが求められるのはどの企業でも共通していることだが、予算編成という名の目標設定に力点を置いているところと、計画立案に力点を置いているところの違いを感じる。

予算編成力点型企業の場合は、マーケット分析や戦略の検討をほとんどせずに、どの部門にどれだけの目標を設定するかをきめ細かく検討し、その検討結果である予算編成を各部門に展開するのに時間をかけているケースが多い。もっと市場を拡大できる可能性があるのに、それを検討せずに目先の目標だけを精緻に決めていたり、ごくわずかな利益を1年間で得るためにものすごい量の資料を作り、まだまだ情報が足りないと指摘するトップがいたりする。こうした企業は結局、市場ニーズの把握や実行計画の立案・策定に課題があるにもかかわらず、各部門に展開した予算編成数値の進捗や足し引きばかりを検討している。

トヨタなど優良企業では、予算編成ではなく、基本方針に対する各部門における目標設定、施策の検討が重視されている。計画を立て、確実に実行し、成果がどのくらい出ているのかを評価しながら振り返り、次回の計画に反映している。

GEのジャックウェルチはその著書の中で、多くの企業の予算検討プロセスほど非効率なことはない、と述べている。また、予算編成の非効率や短期思考の弊害をかんがみ、年間での売上目標、利益目標を出さない企業も出てきている(中期的に何をめざすのか、そのための1年目はうまくいっているのか、その結果としての1年間の財務はどうなのかを答えるだけで投資家を説得できるだけの能力のある企業経営者がいるからこそではあるが)。

目標を達成できないのは、予算編成に問題があるのではなく、目標の立て方に問題はないのか、計画の立て方や施策の検討の仕方に問題はないのかを振り返ることが重要である。そして、日常の中でたえず動いている予算マネジメントのプロセスだからこそ、振り返りにくいテーマでもある。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ページの先頭へ戻る