コンサルタントの本音

◆長寿企業

2016年7月

日本は創業から100年を超える企業の数が世界一多い国である。そのためか長寿企業を研究する研究者もいる。松下には高橋荒太郎、トヨタには石田退三など大番頭と呼ばれた名経営者がいる。番頭というと、朝ドラ「あさが来た」の雁助を思い浮かべるかもしれない。オーナーでもあり、社長の「あさ」に対して、事業のことでは一歩も引かずに、討論する場面が思い出される。このように、社長を戒める役割をつとめるのが番頭である。

番頭は店の主人に雇用され、育てられ、番頭になる。しかし番頭は部下ではない。この番頭次第で店が成長するかどうかが決まる。大番頭を育成できるかどうかがオーナーである店の主人の仕事である。日本の財閥にも番頭がいた。番頭には創業家も事業に関しては何も言えないくらいだったらしい。

日本の伝統的組織の発展に番頭、大番頭が必要不可欠だとすると、企業経営でも番頭の役割を担う人が必要なのだろう。しかし、企業では番頭が部下になっているのではないか。社長と同じ次元で別の視点からものを考え、反対意見を述べる人を企業の中に育てることができるだろうか。社長の意をくみ、調整できる有能な人はいる。しかし、そういう人は大番頭にはなれない。役員間でのフラットな意見交換のできる組織は、大番頭の代わりを複数のメンバーで補っているといえる。

番頭は意識して育てる。素質を見極め、仕事を任せて育てる、そうやって一人前にする。番頭はどういう人かとある研究者に尋ねたら、「ちゃんとした人」という答えが返ってきた。解説をすると意味するところが軽くなるような気がする。「ちゃんとした人」とはどういう人か感じてみてほしい。ちゃんとした人が社長を戒めるような環境がある企業は長寿になれるようである。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ページの先頭へ戻る