コンサルタントの本音

◆意識と思考

2016年3月

事業は価値創造である。価値とは何かを考えることが事業の根幹に関わってくる。しかし、価値とは何かを考えるのは簡単ではない。それはなぜか。今まで考えたことがないことを考えなければならないからではないか。思考プロセスには(ご存じのように)二種類ある。自動的に考え、自動的に答えるプロセスと、意識的に考え、意識的に答えを出すプロセスである。

自動的に考え、自動的に答えを出すことは日常茶飯事である。自分の頭の中でさまざまな事柄を意識せず自然に考えたり、判断したりしている。これは、外部からのインプットに対して、これまでの経験が事実と結びつけられ、新しい印象や考えが生み出されているためである。

一方、意識的に考え、意識的に答えを出すというのは、自動的に考えることができなかったり、自動的に考えたことだけではミスが出てしまったりすることを懸念し、意識して考えるようにすることである。たとえば、顧客から「提案と見積りをお願いします。」と言われた時に、普通は、顧客の要求に合わせて提案し、社内調整をして見積りを行う。これは自動的な思考。しかし、過去の経験や今回の顧客の雰囲気から「これは相見積りを取るだけではないか。」と感じて、それ以外の情報を改めて確認してみる。これは意識的に考えること。ただ、これも徐々に自動化できる。さらなる意識としては、「これをチャンスにどうにか受注が取れないか。」と考えることである。そのためには、見積りの作成に絡んで顧客から根ほり葉ほり情報を引出し、それを通じて顧客の本当のねらいを見極め、競合よりもより顧客ニーズに合致した的確な提案を作りあげる。さらに、提案内容が本当に実現できるかどうかを検討し、最終的に対応するかどうかを判断する。

ここまで考えると価値のあり方が異なってくる。だが、なかなかここまで意識して考えるというのは難しい。さらに考えるのはとても面倒である。だから結局いつもと同じ思考プロセスになってしまうケースが多く、顧客価値を創造できないままというケースが多いのである。

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