T氏のすべらないコラム

◆鳥だ!飛行機だ!いや...

2016年3月

5月にTOEICテストの出題内容が変わる(企業内等で実施の団体受験では来年4月変更予定)。変更点はいくつかあるが、その一つとしてリスニング問題に 'Elisions' が出ると発表されている。これは going to を gonna、want toを wanna などとする省略形で、ビートルズの「抱きしめたい」の原題やプリントされた歌詞が 'I want to hold your hand' と記されているのに対して実際には ♪I wanna hold your hand♪ と歌われるように、書き言葉としてはNGだが、話し言葉としては当たり前に使われている。遅きに失した感があるが、英語の実務能力試験に口語表現が取り入れられることを喜びたい。

実際、米国人と会話すれば試験英語にはない口語表現を多々聞くことになる。前回モハメド・アリとジョン・レノンの「ベシャリ対決」に触れた。アリはプロボクシングでは5敗したが、「ベシャリ」でレノン以外に負けたのは一度だけ、相手は何と、'一般女性'だ――アリが飛行機離陸時シートベルトを締めず、フライトアテンダントが "Please fasten your seatbelt, sir." 「シートベルトをお締めください」と言った。アリは "Superman don't need no seatbelt." 「スーパーマンにシートベルトは必要ない」と答えた。フライトアテンダントはにこやかに "Mr. Ali, Superman don't need no plane." 「アリさん、スーパーマンに飛行機は必要ありませんわ」。

スーパーマンジョークとしても知られるこの実話、試験英語にはない口語表現の応酬だ。まず主語が Superman なら doesn't となるはずが don't となっている。さらに don't と no、NGとされる否定語二つの二重否定だ。しかも二重否定は否定の否定で肯定になるはずがここでは否定の強調の意味だ。書き言葉としては無茶苦茶な表現だが、実は18世紀までの英語では二重否定は否定の強調であり、文法体系を整えるにあたり否定の否定は肯定となったという。そのため米国では学校で習う英語(国語)では二重否定は肯定の意味だが、口語表現では今も二重否定で否定を強調する用法が残っている。

スーパーマンは日本でも人気キャラで "Look! Up in the sky!" "It's a bird." "It's a plane." "It's Superman!"「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」は1980年代に人気を得た「タケちゃんマン」でもパロられた。「タケちゃんマン」主題歌にはニューヨークと'入浴'の洒落が入っているが、日本生まれの人気キャラ、キティちゃんニューヨークご当地版もかつては'入浴'姿だった。しかし、今では自由の女神のコスプレと、りんごがらみ(ニューヨークの愛称はビッグアップル)に変わった。キャラは現地化できても、ジョークの現地化は難しいようだ。

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. モハメド・アリ現役最後の対戦相手は?
  2. 新人フライトアテンダントの成長を描いたTVドラマ「スチュワーデス物語」で'ドジでのろまな'主人公を演じたのは?
  3. キティちゃん愛好家の一人で本名はステファニー・ジョアン・アンジェリーナ・ジャーマノッタというミュージシャンは?

先月のクイズ正解

  1. ジョー・フレージャー
  2. アポロ・クリード
  3. 遠藤周作

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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