コンサルタントの本音

◆中計策定に意味はあるか

2016年2月

中期経営計画策定は意味があるのだろうか。中計は計画そのものの妥当性よりも策定するプロセスが意味あるものになっているかを考えることが大切である。最近はビジョンや理想の姿を重視して、それに基づいて戦略方針を立て、課題と解決策を検討し、数字で計画立てするように変わり始めている。

しかし、将来の変化を予想して方向性を決めることがどの程度できているかという点については、はなはだ疑問である。将来は予測できないので中計など立てないという会社もある。また、将来の変化を自ら起こしていくという考え方もある。一部の事業ではそれもあり得るかもしれない。だが、通常の企業においては自ら変化を作ることは難しく、外の変化にいかに早く対応していくかが重要になるケースが多い。

にもかかわらず、マーケティングでよく言われる環境分析PESTELをきちんと検討し、将来の変化を予測している企業がどれほどあるのだろうか。PESTEL分析とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)、Environment(環境)、Legal(法、制度)の頭文字を取ったもので、それぞれの視点での変化を予測し、自らの事業に与えるインパクトを検討するというオーソドックスな分析手法である。

変化への対応の多くは、どちらかと言うと今、顕在化してきた変化に対して3~5年で対応しようとしているように見えて仕方がない。それは3~5年後の変化ではないので、今の変化に対応しても先の変化に乗じることはできず、たとえきちんと中期計画を実行したとしても成果は乏しい。

例えば、若者がモノを買わなくなっていることが見えてくる。この変化への対応として、一段上の魅力的な商品を作るとか、中国や新興国の売上を伸ばすといった方針を立てたとする。しかし3~5年後は新興国の若者も徐々にモノを買わなくなっているかもしれない。今、見え始めている傾向は、購入から共有へとシェアの概念がグローバルに浸透してきている変化の兆しではないのかと考え、数年後には自分の事業に対しても影響が顕在化する変化であると捉えて対応策を検討していかないと打ち手を誤るだろう。Socialな変化、Economyの変化で主流となる考えと異論を相互に吟味し、底流に流れる変化の兆しを見抜くことが経営者に求められる。このような検討を行った上で方針策定することが、中計を意味あるものにするのである。

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