コンサルタントの本音

◆企業戦略と事業戦略

2015年8月

企業戦略と事業戦略の違いを理解していない企業は無いと思うが、時々この企業は混乱しているのではないかと感じることがある。規模が小さいと企業戦略と事業戦略がオーバーラップする領域もあるが、基本的には異なるものである。

企業戦略には企業のミッション、ビジョン、価値観が必要であるが、それらに基づいて立てた企業の目標に対して、どのように実現するのかを事業のポートフォリオで検討することが重要である。ポートフォリオの検討を通じてビジネスを展開する事業領域を定め、どこにどれだけのリソースを投入し、どの程度のリターンを期待するのかを決定する必要がある。

事業戦略は、事業領域ごとに、どの市場でどのような価値を生み出し、競争相手に打ち勝って目標を達成していくかを考えるものである。もちろん、事業のトップはミッション、ビジョンを策定し、事業戦略を検討する必要がある。

企業戦略では、さらに事業以外の部分、特に組織力向上のための戦略を検討する必要がある。そのため、企業戦略ではなく経営戦略といった表現で呼ばれることもある。組織力向上には、人材開発、組織開発、プロセス開発・改革、ITシステムなどいくつかの視点があり、これらの視点を整理したのが、マッキンゼーの7Sモデルであり、アメリカのMBNQA(マルコムボルドリッジ国家品質賞)フレームワークである。MBNQAは日本では日本経営品質賞フレームワークとして活用されている。

ただし、いかにポートフォリオや事業戦略が適切であっても、それを実行する能力が組織に無ければ絵に描いた餅である。意識改革やリーダーシップを全員が持てるようにするべきなどとよく言われるが、これらも長期的目標を達成するための経営課題のひとつとして明確化し、人材開発をはじめとする組織力向上施策を考えていかなければならない。

中期計画は、数字が中心となるが、果たして組織力向上のための施策の検討がなされているのだろうか。中期計画の中で、事業戦略と組織力向上が両方語られていると、実現度がぐっと高まると思われる。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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