コンサルタントの本音

◆コミュニケーションスキルは組織的に高める

2015年3月

先日、経営幹部候補生の学習の場として、徳島にある西精工株式会社を訪問した。中小企業で大家族主義をうたいESを優先する経営であるが、この時代に部品の製造を日本国内で行なって高い利益率を確保している優良会社である。2013年度日本経営品質賞も受賞している。

社員間でありがとうカードを渡したり、「マイスター制度」を導入したりとユニークな取り組みも多いが、毎日行われる朝礼も「フィロソフィー朝礼」として特徴的だ。ラジオ体操、理念の唱和は他社の一般的な朝礼と同じだが、その後が違う。毎日何を議論するかが決まっており、それに関する資料の束を持った参加者30名が、くじで決まった4名程度のチームに分かれ、テーマについて話し合う。これらのテーマは理念の実現のための施策であったり、ものの考え方であったり、会社としての課題が取り上げられる。

それぞれメンバーは自分の考えや体験を話し、まわりはそれに質問や自分の気づき、考えを話す。びっくりするのは、笑顔、うなずき、あいづち、繰り返しなどコミュニケーションの基本が実践されていること。次に全体共有。各チーム1名の発表担当者が、どのような話であったのかを紹介する。司会役はその場で、発表について自らの気づきや意見などを述べ、話を膨らませる。またファシリテーター役が、関係するコメントがあった別の人に振り、全体で話を深堀りし、共有する。話をする人に皆が向きを変え、顔を見るようにしている。これを全チーム分行うと、ほぼ全員が話をするように運営される。

このファシリテーター役が抜群にうまく、彼はマネージャーとしてもおそらく質が高いことが見て取れる。ファシリテーター役と司会役はうろうろしながらチーム内で何が話し合われたかを傾聴し、全体共有に備える。恐らく司会役の人にはリーダーとしての育成の場となっていると思う。コミュニケーション、対話の質をあげることが朝礼の狙いである。

大企業ではこのような活動の良さが理解できない幹部や管理職がいて、実践するのはなかなか難しいと思われる。もし、できるようになれば、ものすごいコミュニケーション力が身につくであろう。たとえ全社での活動が難しいとしても特定の部門でなら実践できる。コミュニケーションスキルは個別ではなく、組織的に高めると効果的である。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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