T氏のすべらないコラム

◆お魚くわえた・・・

2014年10月

一時期「スギちゃん」と呼ばれていた知人がいる。別に杉田とか大杉といった名字ではなく、ある芸人に風貌が似ていたからだ。そのうちその芸人のメディア露出が減り、しばらくは酒席等で「こっちがまだ『スギちゃん』と呼ばれてるのに、本物の方が消えちゃったぜぇ!ワイルドだろぉ?!」とやってウケていたが、それも長くは続かなかった。流行りネタはすぐ賞味期限が切れ、'いいじゃないの~'と使い続けては'ダメよ~ダメダメ'だ。

今夏連続ドラマで話題を呼んだ「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」の「昼顔」は1967年のカトリーヌ・ドヌーヴ主演映画に由来するから、また古いなと思ったが、確かに元はそうでも最近、情報番組が「平日昼顔妻」という造語を社会現象として紹介したため、新たな流行りネタとなったそうな。ドラマも妻が夫のW不倫に気づくきっかけが旧姓の通称使用からと現代風テイストだったので、この種のドラマではお約束のベタな台詞は賞味期限切れで登場しないのではと危惧?したが、さすが脚本井上由美子、やってくれた――密会現場をついに押さえた妻が上戸彩演じる夫の不倫相手に叫ぶ!「泥棒猫!」――この「泥棒猫」、和英辞典的に英語化すると a slinking cat といったところだろうが、これだと「サザエさん」の♪お魚くわえたどら猫♪的な意味にしかならない。「昼顔」的用法を踏まえて adulterer を記載している辞書もあるが、これだと男女両方に使える法律用語的表現となり、女性を指す比喩表現の「泥棒猫」とはニュアンスが違う。

仏映画「昼顔」公開の前年、日本で放映が開始された米国の人気TVドラマ「奥様は魔女」も、初期の何回かは主人公サマンサの夫ダーリンの浮気がテーマとなっている。ある回ではサマンサの母エンドラの計略で魔女界一のセクシー美女セーラがダーリンを誘惑する。二人で食事中の現場に踏み込んだサマンサは魔法で時を止め、 "Come off it, Sara." 「そこまでよ、セーラ」と割って入る。興奮気味のサマンサに対し、母エンドラが言う "Dignity, Samantha,dignity." dignity は「品位」という意味で、吹替では「サマンサ、品良くやりな」となっている。サマンサは "Stay away from Darrin, Sara." 「ダーリンに近づかないで」と言うが、セーラも professional pride 「プロの誇り」にかけてダーリンを落とそうとする。サマンサはセーラを評して "That home-wrecking harpy." と言うのだが、この home-wrecking harpy こそ「泥棒猫」の英訳としてピタリとはまる。home-wrecking は「夫婦の仲を裂く」、harpy はギリシャ神話の怪物の名前に由来して「強欲な性悪女」の意味で使われる。神話に登場するが、ハーピーは女神ではなく「この上なく不潔で下品な怪物」だそうな

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. 日本エレキテル連合のコントで「ダメよ~ダメダメ」とやる未亡人の名前は?
  2. 「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」の主題歌「他人の関係」を番組エンディングで歌った歌手は?
  3. 2005年製作の米国映画「奥さまは魔女」の主演女優は?

先月のクイズ正解

  1. セントルイス・カージナルス
  2. ランニングホームラン
  3. シューレス・ジョー(ジョー・ジャクソン)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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