コンサルタントの本音

◆プロセスの標準

2014年10月

最近は初夏の開催も増えているが、秋の運動会シーズンとなった。練習に没頭する子供と共に、親も撮影用の場所取りや弁当作りの算段と親子で慌ただしくなる頃だ。親子の奮闘はさておき、運動会当日の進行を務める学校は手腕が問われる。時間通りの競技進行や会場整備、来賓対応などもある大型プロジェクトだ。だが全国津々浦々で多くの開催があるにもかかわらず当日の混乱についてはあまり聞くことが無い。教師や生徒による実行委員会が歴史的にノウハウを持ち、新しい競技・演目が入っても吸収できる「標準化」がなされているのかもしれない。

業務を効果的、効率的に行うためには業務プロセスの標準化が必要である。製造部門では昔から業務の標準化が行われ、現場にその標準を変更できる権限を与え、効果をあげてきた。一方で事務部門における作業の標準化は、個別性を排除していく面があり、独自のやり方でやってきた人や部門から見ると面倒である。最近ではSAPなどITシステム導入時に標準化を推進し、効率的に実施できるようになってきたが、個別性の高い業務では慎重に導入しないと業務量が増えるリスクもあり、なかなか簡単には進まない。また一人でアウトプットを出すことができ、その個人のノウハウが生かせる業務やITシステムに乗らない業務などは、標準化が最も進んでいないだろう。

事業開発も標準化しにくいプロセスの一つである。なぜならビジネスの成功の仕方は様々であり、流れにそって実施すれば必ず成功するというものではないからである。しかし、だからといって無手勝流でやればいいというものではない。そこにはオーソドックスな検討すべきことが存在している。それらの多くはすでにマネジメントの世界で提示されている。たとえば市場分析であり、競合分析であり、SWOT分析である。こうした分析を押さえ、戦略を検討するプロセスでは社内である程度の標準が必要である。

「リーンスタートアップ」は、これまでの事業開発プロセスがまだ成功するかどうかもわからない段階であまりにも大きなリソースを投入し無駄な投資をしてしまうことを反省し、プロセスの変更(プロトタイプの活用による段階的な完成形へのアプローチ)を提唱している。しかし、プロセスというとどうしても精緻に構築してしまいがちである。社内で新たに何かを開発する場合、必要なことではなく、「やったほうが良い」ものが入り込む。標準化は要件と労力の中で、何を標準とするのかを考える必要がある。やったほうが良いものを入れると労力がかかりすぎてしまい、結果的に活用されなくなる。また、すべてを規定にしてしまうと、それを順守することが目的となってしまい、改訂と展開に時間がかかるのも大きなマイナスだ。

見本やチェックリストなどを準備して要件に合わせてより簡単に標準を活用できるようにする工夫も必要である。特に「リーンスタート」など、そもそも重くならないようにするプロセスを社内で展開するために、精緻化を進めて行った結果、結局スピードが上がらないのであれば、何のためのプロセス改善なのかわからなくなってしまう。みなさんの新事業開発プロセスはどの程度、本質を押さえ、身軽にできていますか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ページの先頭へ戻る