コンサルタントの本音

◆リーンスタートアップ

2014年9月

熱帯夜の睡眠不足や冷たいものの飲み過ぎ、冷房による冷えなどで体の代謝能力低下が引き起こす「夏太り」、これから迎える「食欲の秋」とダイエットしたい人には悩みが尽きない時期ではあるが、その悩みの元凶である「ぜい肉」を絞った憧れの状態は「リーン(lean)」呼ばれる。ビジネスの世界でも新規事業開発を進める際に、「リーン」という言葉はずいぶんと聞かれるようになった。経営の教科書に沿って、丁寧な市場調査、綿密に練った事業計画、自社の技術・ノウハウを有効に活用したプロダクト開発をしたものの、マーケットに受け入れられず無駄な投資をしたという苦い経験をもとに、新規事業開発をもっと効率的にできないか、という視点から「リーン」は実践されている。

顧客のニーズ仮説のアイデアがあれば、素早く顧客にプロトタイプを見せて、ニーズの確認や市場性に関する情報を収集し、徐々に顧客の期待のスイートスポットを探し当てて完成品に近づけながらビジネス展開するほうが、無駄なく効果的に事業開発ができる。この考え方はデザイン思考の考え方とも連動している。もともとは名著「エクセレントカンパニー」の中で説明されている「ファイヤー」という概念でもある。優れた企業は、最初に市場にプロダクトを出す。そうするとニーズとの間にどの程度、思惑の違いがあったかわかる。そこを修正してもう一度プロダクトを出す。マーケットの反応をもとに素早くプロダクトを開発、修正できる能力が重要だと紹介されている。「ファイヤー」とは市場に弾を撃つという意味である。1発の弾で仕留めようとしても当たらないリスクがあり、また大きなコストもかかるため、開発段階で市場の反応を見ながらプロダクトを完成に近づけて行く手法が取られるようになってきたのである。

アイリスオーヤマをはじめとするアイリスグループの大山会長は、「うちの商品開発は早いわけではないが、多くの会社は事業性評価など前もって検討するのに時間がかかりすぎるので、結果的に当社の開発スピードが速く見える」と言っている。アイリスでは、事業領域を決めるのはトップの仕事。そこでどのような商品を開発するのかを考えるのが社員の仕事。社長がOKしたら、売れる売れないの結果は社長の責任としている。

開発にそれ相応の資金が必要だと、どうしてもビジネスプランに精緻さが求められる。しかし、ビジネスプランの精緻さのポイントが誤っているケースがある。ビジネスプランは結局仮説の塊である。だから、仮説がどの程度確からしいのか、といった検証データが必要になる。プロトタイプを活用してそうした情報を収集することが重要であり、机上でいくら市場分析やコスト分析を行っても正しい判断につながるとは限らないのである。

もともとは「リーン」の概念は、トヨタ生産方式の生産工程の考え方に基づいている。トヨタには「現地現物」という価値観もある。アイデアは現地現物で素早く確認し、無駄を省いて新しい事業を立ち上げ、推進する。マーケティングや事業戦略においても、こうした視点から学び直すことをお勧めしたい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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