コンサルタントの本音

◆人間中心アプローチ

2014年7月

2014年のワールドカップは開催国ブラジル代表を大差で下したドイツの優勝で幕を閉じた。すでに3大会前の話で恐縮だが、日韓ワールドカップ代表監督のフィリップ・トルシエは、代表を強くするために、将来の代表候補であるユースチームの強化を意識した。小野伸二や遠藤保仁など黄金世代と言われたメンバーである。彼らを育成するために、ブルキナファソでの合宿やワールドユースの試合の合間に孤児院の訪問を取り入れている。孤児院のおかれた状況を体感させることで、メンバーに多くの気づきを与えた。アフリカの孤児院での話を聞いて自分の理解を超えた人生があることを痛切に感じたであろう。それは彼らのサッカーに対する見方・考え方にも大きな影響を与えたはずである。

さて、先日デザイン思考のセミナーを開催した。講師の言葉で印象に残ったのは、「デザイン思考はマインドセットである」とのメッセージである。これはデザイン思考を提唱したIDEOのメンバーのポリシーだそうだ。そのマインドセットの重要な要素の一つが「人間中心」であること。本来、市場は人間そのものやその集団である顧客の塊であり、市場アプローチとはすなわち人間中心のアプローチそのものを包含しているように思われる。しかし、現実には、市場分析では市場の規模や成長性、その鍵となる主なニーズや購買決定要因といった要素にばかりに注目が集まり、人が今何に困っているのか、満たされないニーズは何かといった根源的な課題認識が見落とされがちになる。

では、人間中心のアプローチをどのように組み込めばよいのだろうか。先述のトルシエの行なった刺激療法もひとつのアプローチであろう。状況は異なるが、研修や検討の場でも、今までの見方・考え方に新たな気づきや考え方を志向するアプローチを加えるべきである。ただし、講義や頭の中だけで済まそうとするのではなく、研修の前や合間に、五感を強め、今までにはない体験をすることを組み入れることがとても重要だ。特にイノベーションを志すのであれば、そうした体験の組み入れが少ないことは結果として大きなハンディとなって表れることさえあり得る。今後、事業を検討する研修や検討の場では、ぜひとも「体験」を取り入れた研修内容にカスタマイズして実施されることをお勧めする。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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