T氏のすべらないコラム

◆空から恐怖の大王が・・・

2014年7月

「願望は実現する、夢はかなう」――かつて藤原紀香が「夢はボンドガールになること」と繰り返していたが、そんなある日CNNニュースを見ていると、キャスターが "Norika Fujiwara, a Japanese actress, has become a Bond Girl." と切り出したので、これはまさに "Dreams come true." と驚いた。
続けてキャスターは藤原紀香が日本の国債(bond)のCMに出演することになった、つまり「ボンドガール」だと述べたので、洒落だとわかったが、香港発のアジア向けニュースだったとはいえ、CNNでいきなり言われると視聴者の大半は映画007シリーズを連想したにちがいない。

ウディ・アレン監督脚本の映画「ラジオ・デイズ」は、第二次世界大戦中のラジオ放送史に沿ってある少年を中心にドラマが展開される。例えば、1938年、少年の叔母 Bea が男性とデート中、山中で濃霧のため停車して車外へ――男性から "Aw, Bea, you know how I feel about you." 「君への気持ち、わかってるだろ」と迫られてムードは最高潮というところで、カーラジオから "The landing of hundreds of unidentified spacecraft has now been officially confirmed as a full-scale invasion of the Earth by Martians." 「何百もの正体不明の宇宙船団の上陸が火星人による地球総攻撃と公式に確認された」という臨時ニュースが流れてくる。full-scale はこの場合「総力あげて」の意で、ビジネス英語としてもリソースをすべてぶち込んで勝負する時等に使える。
山中に近いニュージャージーからの現場中継は緊迫し、"We could be cut off at any moment." 「いつ放送が中断されるかわからない」と言いながら、続々襲来する宇宙船、逃げ惑う人々がつぶされて死んでいく様を伝える。たまらず男性は女性を置き去りにして車に飛び乗り、逃げ去る。おかげで Bea 叔母さんは "She walked home 6 miles." 約10km を歩いて帰宅する羽目になる。架空実況放送を事実と信じ込ませ、全米をパニックに陥れたラジオドラマ「宇宙戦争」だ。

日本でも1979年4月1日、「宇宙人が友好を求めるメッセージを送ってきた」と、カーター大統領(当時)が緊急声明を出す架空放送をやったことがある。
攻撃だと刺激が強すぎると配慮して「友好を求める」としたうえすぐにウソですとやったものの、視聴者から抗議が殺到、番組の最後に猛抗議する視聴者とキャスター(故筑紫哲也氏)が電話で話す模様を本物の実況中継――「あんまりびっくりしてブランコから落ちて怪我した」といきり立つ視聴者に筑紫氏、「あなた、ブランコに乗ってテレビ見てるんですか?」――そこかよ。And that's the way it is.(では、今日はこんなところです)

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. 「宇宙戦争」を番組化した人物は?
  2. 1の人物がハリー・ライム役を演じたグレアム・グリーン脚本の映画テーマ曲が流れるJR山手線の駅は?
  3. 「ラジオ・デイズ」で主要キャストを演じたミア・ファローがヒロイン役だったスコット・フィッツジェラルド原作の映画で衣装を担当し、アカデミー賞衣装デザイン賞をもたらしたファッションデザイナーは?

先月のクイズ正解

  1. ザ・ドリフターズ
  2. 危険な情事
  3. エリザベス・テーラー

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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