T氏のすべらないコラム

◆四六時中も

2014年6月

サザンオールスターズの「真夏の果実」の歌詞に「四六時中も好きと言って」という一節がある。この「四六時中」とは、九九でおなじみの'しろくにじゅうし'から24時間、つまり1日中ずっとという意味だ。
同じ意味の言葉に「二六時中」がある。こちらは江戸時代の時間単位の刻(とき)からで、一刻(いっとき)は2時間だったので、1日は12刻、つまり'にろくじゅうに'で、「二六時中」というわけだ。

日本語には数字絡みの言葉が多い。「十年一昔」もその一つだ。英語でも10年には似たような意味があるが、数字は用いず10年を Decade という言葉で表す。例えば、「真夏の果実」がヒットしたのは1990年だが、その前のDecade つまり80年代は、米国では Greed Decade と呼ぶ。
「四六時中」money, money, money の Greed Decade「強欲の10年」だったというわけだ。この時代を象徴するのが映画「ウォール街」の主人公、マイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーの台詞 "Greed is good." 「強欲は善」だ。これは貧しい境遇から成り上がったゲッコーの哲学でもあった。

同じように貧しい境遇から成り上がるジェット・リンクをジェームズ・ディーンが演じた「ジャイアンツ」ではジェットが「四六時中も好き」という想いを生涯抱き続けるレズリーに "Money isn't everything, Jett." 「お金がすべてじゃないわ」と言われ、"Not when you've got it." 「持ってる人間の言うことさ」と答える。when you've got it「手に入れた時には」確かに Not (Money isn't everything.) だが、持っていない自分にとっては「金がすべて(Money is everything.)」というわけだ。

「ジャイアンツ」は、レズリーの息子と結婚したメキシコ人女性が美容院で予約していたにも関わらず、非白人とわかるや、 "We're all booked up."「予約でいっぱいです」と拒絶される場面からクライマックスを迎えるが、米国バスケットボールチームオーナーの黒人差別発言、スペインでのブラジル人サッカー選手に対するバナナ投げつけ、タイガー・ウッズへの「フライドチキンをご馳走する」発言と、racial discrimination は相変わらず根深いようだ。バナナは猿の好物だから、フライドチキンは黒人が好んで食べていたからいやがらせになるという。
かつて米国のTVドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」では、ネオナチバンドのメンバーが登場人物デビッドにくしゃみでいやがらせをした。これは、ハクションに当たる英語の擬音 Aschoo が A Jew (ユダヤ人に対する蔑称)と聞こえるようにやったものだ。「四六時中」と比べ、芸のない洒落だ。

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. 桑田圭祐の第二回「ひとり紅白歌合戦」でサザンオールスターズメンバーが扮したグループは?
  2. 「ウォール街」と同じ年に公開されたもう1本のマイケル・ダグラス主演作品は?
  3. 「ジャイアンツ」でレズリー役を演じた "The Most Beautiful Woman In The World" 「世界一の美女」と称された女優は?

先月のクイズ正解

  1. 空手バカ一代
  2. 村上春樹
  3. アニー

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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