コンサルタントの本音

◆標準化の誤解

2014年3月

先日、NECラーニングが主催したセミナーでトヨタ自動車様が講演された「質創造マネジメント」の内容は非常に興味深いものであった。講演の中で、「経営トップの仕事は会社全体の問題解決である。」「QC活動などを通じて学習した問題解決の方法を経営に取り入れていることが他社とは違う部分ではないか。」と分析されていた。会社のトップは様々な問題の解決に時間の多くを割いているが、結果的に問題対処で終わっているケースも多く、この対処の仕方がその後の企業の成長に違いとして表れてくるということだ。

問題の解決で重要なのはPDCAサイクルの最後のA(アクション)である。特に「標準化」「水平展開」が鍵になる。問題の要因を明らかにし、解決する手段を講じることはどこでもやっている。しかし、その手段を標準化し、誰もが活用できるようにしているかというと心もとない。標準化というと、マニュアル作成の負担や画一的対応という負のイメージを持つ人もいる。問題解決のためにルールを決め、それを徹底させて解決を図るケースもあるが、問題の要因分析が中途半端で順守しても問題が解決できず、逆に現場の負担が増えて標準化が嫌われるケースも散見される。

標準化には、本来問題を起こさない、あるいは二度と問題を発生させないといった意味や、個人の持つノウハウや経験を共有するという意味がある。だから、代表的なアウトプットや議事録、企画書の目次や記入項目の設定なども標準化なのである。個人レベルでも、うまく行った時のプレゼン資料をアレンジしながら何度も活用していることなどがあるはずだ。これなども成功事例という名の個人的な「標準化」である。

マーケティングが弱いと自覚している会社の場合、どのように標準化を適用していけばいいのだろうか。もし、例外的に事業がうまくいったケースが複数あれば、その成功事例から共通化できる部分を見出し、一部でもいいので、マーケティングプロセスを標準化すると良いだろう。成功事例があまりないというのであれば、失敗事例を積み上げ、いつもどこで失敗するのか、失敗の要因を洗い出し、二度と起こさないポイントを共有化=標準化すると良いだろう。

また、集団で学習から実践、振り返りまで行い、良いと思われるところを標準化するというやり方もある。この場合、「何を議論するか」「どのように議論するか」を初めに標準化しておく必要がある。P&GのA・G・ラフリーは、事業部長との戦略レビューを「どこで戦うか」「どうやって勝つか」の二つに絞って全員が同意するまで徹底的に話し合う、という方法に変え、会社を再生した。

このように話し合いのプロセス、あるいは話し合いの作法をあらかじめ「標準化」しておくことが重要で、また、話し合いを意味あるものにするには、問題解決の仕方やマーケティング、事業戦略の検討の仕方などについて、情報やノウハウを事前に共有しておく必要がある。研修の受講においても、個々人の思惑でバラバラに受講するのではなく、メンバーが一緒に受講し、共通認識の形成のもと、話し合いのプロセスから変革できるようにすることをぜひお勧めしたい。それが具体的成果に結びつけるための研修受講の作法なのである。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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