T氏のすべらないコラム

◆時には'超訳'も

2013年8月

ハワイ語で 'Mahalo' といえば「ありがとう」の意味だ。ホノルルでは日本人観光客が多いため、ハンバーガー店等の出口によく「マハロ」とカタカナで大書してある。現地観光ガイドによれば、出口近くにゴミ箱があり、上に「マハロ」とあるのを見た日本人が大声で「マハロというのはゴミ箱のことやー!」と叫んだという(語尾からして関西人だったのだろう)。

TVドラマ化もされた人気コミック「のだめカンタービレ」で主人公のだめは、仏語が全くできない状態でフランスに留学するが、パリで同じアパートに住む仏人学生が日本アニメのファンだったことから一夜にして仏語会話をマスターすることになる。仏人学生が全巻揃えていた仏語版日本アニメ「プリごろ太」のDVDを見て、日本語版の台詞をすべて覚えているのだめは、場面場面の日本語が仏語ではどうなっているのかを知るという設定だ。

この「のだめ」方式は、英語学習でも有効だが、注意が必要だ。例えば、米国映画「スティング」でギャングのボスが競馬の単勝に50万ドル(舞台設定は1936年のシカゴだから、桁違いの大金)賭けようとする場面――ポール・ニューマン演じる賭博場経営者は 'Can't lay that off in time. A bet like that could break us.' と受けるのを渋る。
日本語の字幕や吹き替えは「受けられないな。当たれば破産だ」となっている。ここでは lay off は「レイオフ(解雇)する」の意味ではないが、主語 We が省略され(会話ではままある)、Can't lay that off だから、lay off には「受け付ける」という意味もあると覚えると、「ゴミ箱は mahalo」のような勘違いになる。lay off を辞書で引くと、「両賭けする」という記載もある。これは、賭博の胴元が大金を賭けられた場合に保険の意味でその一部を他の胴元に自ら賭け、当たった時の損害を減らすという方策だ。台詞には in time と続くから、「両賭けする時間がない」つまり「当たれば自分の全額負担で破産だ」ということだ。字幕や吹き替えでは短い台詞の間にそんな説明はできないから、「受けられないな」で済ませているわけだ。

米国でビールを注文する場合、銘柄指定が普通だ。'Beer.' としか言わなければ、 'What kind?' と銘柄を確認されることになる。米国のTVドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」で登場人物が 'Heineken!' 「ハイネケン!」と注文を叫ぶ場面がある。放映していたのがNHKだったこともあり、商品名は出さないだろうと吹き替えを確認したら、「とりあえずビールね!」となっていた。
ま、「『とりあえずビール』は英語では『ハイネケン』と言うんやー」と誤解する向きは少ないだろうが・・・。

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. TVドラマ「のだめカンタービレ」でドイツ人名指揮者フランツ・フォン・シュトレーゼマン(別名ミルヒー・ホルスタイン)を演じたのは?
  2. 「スティング」は1973年度アカデミー賞で作品賞・監督賞はじめ7部門で受賞を果たしたが、米国内興行収入は第2位だった。その時の第1位の作品は?
  3. 「ビバリーヒルズ青春白書」の原題は?

先月のクイズ正解

  1. ポール・マッカートニー
  2. エドワード8世
  3. コリン・ファース

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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