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Salesforce vs. Dynamics CRMの製品比較 ~導入時のご参考に~

2015年8月
エキスパート
杉岡しづか

みなさんの会社ではCRM(Customer Relationship Management)を導入されていますでしょうか?
調査データによるとCRMの普及率は1割を少し超えたところのようです。一方で企業内の状況を見ると、簡単な情報共有もできていないことのほうが多いような気がします。例えば、以下のようなことがよく起こっているはずです。

  • 過去の営業履歴が共有されていないので、受注し既存顧客になるまで、ゼロベースの新規開拓を繰り返すため、営業活動の効率が悪い
  • 隣の部門の既存顧客の情報や過去に訪問した顧客の情報が共有できていない。商材の横展開を図ろうと企業上層部は叱咤するが、なかなか進まない。
  • 異動者・退職者の顧客訪問情報が会社で共有されていないので、受注できなかった顧客情報はすべて捨てている状態である。

これらは全て、CRMの導入で解決できる課題です。解決できれば営業効率が向上し、商談期間の短縮や、社員の負担軽減などが期待できます。また、受注が増えれば売上も上がり、会社の業績向上に貢献できるようになります。

しかしながら日々使うものですので、自社に合ったCRMを導入しなければ、効果を発揮しないどころか、業務効率が悪化することもあります。製品の選定に際してチェックするべきことは、個別の機能はもちろんですが、その機能の根底にあるソリューションコンセプトを見極めてほしいということです。幅広い顧客層を対象にしているCRMと言ってもそれぞれ想定している顧客があり、得手不得手があります。

そこで、ご提案したいのは、この後ご紹介するような比較表を概要レベルでご参考にしていただき、ある程度絞った後に、検討時にトレーニングを受講することです。大半のお客様は採用を決めてからトレーニングを受けられますが、CRMのように企業インフラともいえるソリューションで一度導入してからリプレイスすることが困難なソリューションの場合、事前にトレーニングを受講して、そのソリューションの機能やコンセプトをよく理解したうえで、検討するほうが失敗がありません。

さらに申し上げれば、トレーニングを受講することにより、その製品のデータ項目の作り方もよく理解できるはずです。導入したことがある方はお分かりになると思うのですが、CRMのような部門をまたがる基幹系のソリューションはデータ項目の作り方が命です。細かい機能レベルの修正はあとからでもできますが、データ項目の変換は大変苦労します。データ項目の作り方次第で部門間の情報共有がスムーズになったりもします。是非、CRMの導入前に必要な機能をある程度絞り込んだら、トレーニングを受けてみてください。

それでは本題のCRM比較のご紹介をいたします。今回は代表的なSalesforceと Dynamics CRMの二つの製品を概要レベルで比較してみます。

■Salesforce とDynamics CRM ~製品の目的は同じ~
セールス、カスタマーサービス、マーケティング向けのシステムです。営業、カスタマーサービス、マーケティングのスタッフで顧客情報を共有できるため、コミュニケーションを円滑にし、業務効率を上げることができます。また、スタッフ全員が顧客の状況を把握し、連携できるため、最適な顧客対応ができるようになります。 さらに、これらの製品にはレポート機能があります。過去の商談や顧客からの問い合わせ情報などを可視化して分析できるため、注力すべき案件や、とるべき次のアクションが判断できます。

■製品比較
製品コンセプトも含めて粒度を細かくした比較は以下のとおりです。

機能SalesforceDynamics CRM
UIデザイン 既存機能に関しては、ページのデザインを大きく変えることがほとんどない。また、大きくデザインが変わるときには、以前のレイアウトで使えるようなオプションが用意されていることが多いため、ユーザーは同じ機能を同じ操作で扱える。
反面、新機能は新しいデザインで提供されるので、同じバージョンでのデザインに統一性に欠ける。

→常に使い慣れたUIを利用したいユーザー
 に最適
バージョンアップのタイミングで、大きくデザインが変化することがあるため、ユーザーは新しい操作を覚えなければならない。
ただ、同じバージョンではデザインに統一性があるため、1つの操作を覚えると、ほかの操作も予測がつきやすい。
Windows 8やOfficeに操作性が似ているため、それらになれているユーザーには予測しやすい。

→変化に適応できるユーザー、
 Windowsユーザーに最適
電話オペレーター向けUI コールセンターのスタッフは顧客と電話をしながら操作するため、UIデザインへの要望が特殊な場合が多い。それらの要望に応えたコールセンター用の画面デザインが提供されている。

→コールセンターでの利用は特におすすめ
電話オペレーター向けの特別なデザインは提供されていないため、作りこみが必要。
提供形態 クラウドでのみ提供。ユーザー数が増えると、高くつく可能性がある。
ただし、Force.comなどのプラットフォームのみの提供もしている。プラットフォームのみの価格は安価なため、作りこめば月々の費用を抑えらえる。
クラウド・オンプレミス両方が提供されている。オンプレミスでの導入は、ユーザー数が多い場合、安く上がる可能性がある。
データセンター 両社とも国内にデータセンターがある(Dynamics CRMは2015年3月から)。
金融、医療や官公庁・地方自治体などの国内データ保管要件をクリアできる。
開発 Salesforce独自のApex言語(Javaライク)を使用。 Visual BasicやC#での開発が可能。

→開発者のすそ野が広い
全般 ユーザーの声を反映したきめ細かな機能を提供することが多い。 大胆な新機能を提供してくることが多い。
Office連携 Excel、Outlookとは連携可能。Power BI、Office 365とは連携強化中。 Excel、Outlook、Power BI、Office 365との連携は、Salesforceの連携機能よりもはるかに高い。

※本比較表は2015年8月時点のものです。本比較表に基づいて生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。自己責任でご参考にしてください。

いかがでしょうか?製品選択の参考になりましたでしょうか?冒頭にも解説いたしましたが、CRMのようなリプレイスが難しいソリューションを導入する際に、事前にトレーニングを受けると、より正確な製品比較ができます。また全社共通のデータ項目を設定する際の参考にもなります。ぜひ、製品検討時のトレーニングの受講もご検討ください。

弊社では、Microsoft Dynamics CRM研修とSalesforce.com認定トレーニングの両方を行っています。興味がある方は以下をご覧ください。

NECビジネスインテリジェンス 人材開発サービス統括部 エキスパート 杉岡しづか
NECビジネスインテリジェンス 人材開発サービス統括部
エキスパート 杉岡しづか

1992年、NECソフトウェアに入社し、研修部門に配属。MS-DOSからマイクロソフト製品の研修に従事し、現在は、Visual StudioやMicrosoft Azureを利用した開発者向けの研修や、Microsoft Dynamics CRM、SalesforceなどのCRM製品の研修の講師を担当。マイクロソフトのセミナーでのスピーカーとしても活動中。

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NECビジネスインテリジェンス 人材開発サービス統括部
e-mail:msug@educ.jp.nec.com

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