T氏のすべらないコラム

スルーできない違い

2017年8月

「鉄腕アトム」の誕生日は原作では2003年4月7日とされている。原作発表時から50年以上先を設定していたのだが、現在ではとうに過ぎ去った過去だ。しかし、AIの発展目覚ましい今日この頃だが、いまだにアトムのようなロボットは誕生していない。アニメ「鉄腕アトム」の世界を見ても、乗り物もインフラも現在よりはるか先を行っているといっていい。しかし、唯一圧倒的に現在の方がアトムの世界より進んでいるものがある。それは電話だ。何と、「鉄腕アトム」では固定の黒電話を使っているのだ。

電話はある意味近年最も発展した機器だろう。古い時代だと、直接相手にかけるのではなく、交換手が相手先に電話をつないでいた。そんな時代を舞台とするジェフリー・アーチャーの小説「ケインとアベル」に、米国でホテル王として成功した主人公が英国に出張し、ホテルから米国に電話する場面がある。ようやくつながり、話し始める主人公に交換手が割って入り、"Are you through?" と尋ねる。主人公は話し始めたばかりのところで何を言うかと怒り、電話が終わったところで "I'm through." と言う。英国人の交換手は「通じましたか?」と確認したのだが、be through は米語では「終わる」という意味なので、話し始めたところでいきなり「終わりましたか?」と聞かれたと勘違いしたというわけだ。

"England and America are two countries separated by the same language." 「英国と米国は共通の言語で分けられた2つの国だ」と言ったのは劇作家ジョージ・バーナード・ショーで、同じ英語でありながらイギリス英語とアメリカ英語では意味が違い、言葉による誤解が生じることを示唆している。speak the same language は「考え方が同じ」という意味の熟語だが、そうも行かないようだ。

「刑事コロンボ」でロンドンに出張するエピソードがあるが、殺人事件の捜査でも言葉の壁に悩まされている。検死をコロンボは autopsy と言うのだが、ロンドン警視庁では postmortem、犯人の車の hood が犯行当日濡れていたと迫れば、 "Hood?" と聞き返され、"Oh, bonnet!" と笑われるといった具合だ。

米国 elevator と英国 lift も両国で異なる単語の例としてよく挙げられる。ある人がこれを評して「elevate も lift も『上げる』という意味で上昇志向のみですが、日本語は『昇降機』と下がることも考えている。国民性です。」と述べたことがあるが...日本語は「エレベーター」でしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

クイズ

今月のクイズ(正解は10月号に掲載)

  1. 鉄腕アトムの生みの親天馬博士の出身大学は?
  2. 「ケインとアベル」のアベルの娘が主人公の小説は?
  3. 刑事コロンボ「ロンドンの傘」の原題引用元の戯曲は?

6月のクイズ正解

  1. 藤子不二雄
  2. 王配
  3. マルタ

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