T氏のすべらないコラム

失言殿下

2017年6月

「忖度」という言葉が一躍今年の流行語大賞候補と言われるまでメディアを席巻している。使ったこともなければ意味も知らなかったという人もこの言葉を覚えたことだろう。流行語大賞にはなりそうにないが、最近この「忖度」 に負けず劣らずメディアをにぎわせたのが「海の王子」だ。こちらはとてもおめでたいニュースとともに登場したが、正式名称は、「湘南江の島海の王子」と言い、コンテストで選ばれた藤沢市の観光PR活動を行う男性を指す。話題の方がこの「王子」を務めた年は男女計5人が選出されたが、女性の方の呼称は「海の女王」だ。男性が「王子」ならば女性は「王女」あるいは元々「海の女王」があり、男性の方が追加されたというから、男性を「海の王様」とすべきではと思うのだが、実はこの「女王」と「王子」の組み合わせ、英国では正解なのだ。

黄金週間中のニュースで日本ではほとんど報じられなかったが、英国BBCでは特大ニュース、米国CNNでもトップニュースの扱いだったのがエリザベス女王の夫君フィリップ殿下が8月末を以て公務から引退するという報道だ。フィリップ殿下は英語で Prince Philip、つまり Queen に対して Prince、 「女王」に対して「王子」というわけだ(「王子」とは訳さないが)。

このフィリップ殿下、公務の場でしばしばとんでもない発言をすることからPrince of gaffes 「失言殿下」の異名を持つ。一般人が言えば大炎上間違いなしの人種的偏見に聞こえる暴言も数多いが、中には次の小話に通じるような見たままを率直に述べたが故の gaffes もある。
小話――絵画展覧会に金満婦人が現れ、ある絵を前にして係員に「この絵はだれの絵?」と尋ねる。係員は「モネでございます、奥様」。次の絵を見て婦人、「こちらは?」。「ルノワールでございます、奥様」。そして次に進んだ奥様、「これはわかるわ。ピカソね」。「鏡でございます、奥様」。
エチオピアの古代壁画を見たフィリップ殿下、"It looks like the kind of thing my daughter would bring back from her school art lessons."「うちの娘が学校の美術の授業で描いて持って帰るようなもんだね」。ナイジェリア大統領が殿下の訪問を民族衣装でお迎えしたのに対して、"You look like you're ready for bed!"寝る用意ができたようだね(ローブ風衣装が寝巻に見えるということで)」。

殿下の美的審美眼はさておき、経済に関しても率直な gaffe が1980年代の初頭の英国不況時に出ている。"Everybody was saying we must have more leisure. Now they are complaining they are unemployed."「だれもがもっと余暇が必要だと言っていたのに、今では仕事がないと文句を言っている」。最近の雑誌の見出しに「今年の新入社員は余暇第一」とあったから、殿下の gaffe を思い出せば日本経済は今のところ安心だ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

クイズ

今月のクイズ(正解は8月号に掲載)

  1. 海底王国カインの王子が主人公の漫画「海の王子」の作者は?
  2. Prince Philip の Prince の公式日本語訳は?
  3. エリザベス女王とフィリップ殿下が結婚後の数カ月間を過ごした島は?

4月のクイズ正解

  1. JIN -仁-
  2. ユマ・サーマン
  3. 堤幸彦

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