コンサルタントの本音

◆経営者になる前に考えること

2016年12月

経営者、または事業責任者になるとよく100日プランを作成する。多くは事業戦略を検討することになるが、プラン作成の前にやらなければならないことがある。経営品質向上プログラムのリーダーシップの視点で考えると、それは以下のようになる。

まず初めに、ビジョンを考えることである。理想の姿と言ってもよい。経営理念など抽象度の高いものもあるが、100日プランとの関係でいうと、3~5年後に何を実現したいのかを具体的に説明するものでなければならない。そして、ビジョンの達成度を評価する尺度や目標が関係づけられるようにしなければならない。

ビジョンの作成に当たっては、共に経営を行う経営幹部と一体化したチームになる必要がある。グローバル企業では、トップは自分の意図を理解する幹部を外部から招へいするケースが多い。しかし、それがままならない場合、既存の幹部とチームで動けるようにするための下地作りが必要になる。経営幹部を巻き込んでビジョンを一緒に検討したり、お互いを熟知しあう機会を頻繁に作ったりするなどの工夫が事前にできるとよい。

さらに、ビジョンを組織内外に伝え、理解を促すためにどのような方法を用いるのかを考えることが必要である。上から順番にビジョンを共有していくことが必要で、2階層ぐらいまでは自分で直接伝えられるが、その先は部下に任せなければならない。しっかりと繰り返し伝えなければならず、あいまいさを残すと下へ展開する際に内容がぶれたりする。また、外部の人に対してはシンプルなメッセージにしないとなかなか伝わらない。その伝える仕組みを構想しておくことが必要である。

そして、ビジョンを実現するために、(1)自分は何をするのか、(2)どのようなプログラムを活用して実現するのか(または組織を変えるのか)、(3)資源配分をどうするのか、(4)意思決定の仕方をどう行うのか、について決めていく。これらを明確にした上で、事業戦略の作成に移っていくことが重要である。

このような活動を助けるために幹部研修を活用するのはとても有効である。幹部になってからでは遅いので、幹部になる前の段階で研修を実施すべきである。現実的には、選抜型研修が有効であろう。

これまではビジョンより戦略、コミュニケーションの仕組みより組織変更が重要視されていた。しかし、それではなかなか成果が出なかった。なぜなら、事業戦略を実現するには、計画を立てただけではだめで、実現のための活動に魂が入っていないと成果は容易には出ない。魂が入るとは、部下がビジョンを深く理解し、心の底から計画を成し遂げたいという気持ちになっているかどうかである。理想論を語っているだけでは部下から本気度を問われることになりかねないし、共感も得られない。経営者が自らの経験や感情に基づき、自分は何を成し遂げたいのか心の底から湧き出るものをビジョンとして語らなければならない。

ビジョンとその実現のあり方を徹底的に考え、魂の入ったものになるまで検討する鍛錬の場として幹部研修を実施し、多様な視点や情報、経験を基に事業戦略の実現に向けて活動できるリーダーの養成が求められるのである。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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