T氏のすべらないコラム

◆誰が誰だか・・・

2016年6月

とんねるずの石橋貴明が「ねるとん紅鯨団」に関西人が登場した際、よく聞いていたのが「相手のことを'自分'と言う?」だ。普通「自分は・・・」といえば「私は・・・」という意味だが、関西弁で「自分は・・・」といえば 「君は・・・」の意味になる。それが東京出身の石橋にとっては奇妙この上ないらしく聞くだけではなく、大阪ロケではいつもの「お前らの気持ちはよくわかった」の代わりに「自分らの気持ちはよーくわかったでえ」と実演してみせていた。同じ日本語でも東京と大阪で意味の違う例だ。

今年4月、英国を訪問したオバマ米大統領はキャメロン英首相との首脳会談後の記者会見で "UK is going to be in the back of the queue." 「英国には順番待ちの列の後ろに回ってもらう」と述べた。これは英国が欧州連合(EU)を離脱するか否かの国民投票を前にしてEU残留を促すためにした発言で、もしEU離脱となれば貿易面で不利益を被るぞと脅したものだ。EU残留派の盟友キャメロン首相への援護射撃というわけだが、「順番待ちの列」を意味する queue という言葉が問題になった。これはイギリス英語の表現で、米国では普通 line を使う。米国人のオバマ大統領らしくないというわけで、キャメロン首相側近(英国人)が書いた原稿をそのまま言ったのではないかという疑惑を招いた。これは、米国人が言いそうにない英語を使ったために物議をかもした例だ。

言葉も違えば文化も違う。英国のTVドラマ「ダウントン・アビー」では、物語の中心となるクローリー伯爵家の夫人が米国人で、米国在住の彼女の母や弟はステレオタイプの米国人として描かれる。ある時、この二人が英王室主催のパーティーに参加し、夫人の弟ハロルド・レビンソンのそばを英皇太子が通りかかる。ハロルドは "How do you do? Harold Levinson." と自己紹介する。これに対して皇太子は "You are mistaken, Sir. I am not Harold Levinson, whoever he may be." 「人違いですよ。私はハロルド・レビンソンではありません、それが誰であれね」と突き放す。ハロルドは "No, no. I'm Harold Levinson." 「違います、違います。私がハロルド・レビンソンです」と説明するが、皇太子は "Then why did you say I was?"「ではなぜ私のことを(ハロルド・レビンソンと)言ったのか」と言って立ち去る。米国式自己紹介が通じなかったのだ。ハロルドは自嘲し、"Who's on first?" とつぶやく。これは「誰が誰だかわからない」という意味の米国式表現で、野球のチームにフーという人物がいて Who's on first だと「一塁を守るのは誰か?」か「フーが一塁手だ」かわからないという小話から――もちろん野球が題材だから英国人には通じない。

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. 石橋貴明は紅白歌合戦に別ユニットで2回「初出場」しているが、2回目初出場時のユニット名は?
  2. 「ダウントン・アビー」シーズン1の冒頭で沈没したと新聞報道される客船に祖父が乗船していた日本のミュージシャンは?
  3. 「ダウントン・アビー」で伯爵夫人の母マーサ・レビンソンを演じた米国の女優は?

先月のクイズ正解

  1. 足利義昭
  2. ナポレオン・ボナパルト
  3. ヒュー・グラント

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ページの先頭へ戻る