コンサルタントの本音

◆模倣とイノベーション

2016年4月

常に新しい価値観に対応していく必要に迫られる企業において、イノベーションは今までにないビジネスを作るうえで不可欠であるという認識が広まりつつある。そこで、ビジネスモデルキャンバスをツールとして用いて検討することでベースを作り、リーンスタートアップのできる組織に改革してイノベーションを起こしていこうという意識が高まっているように感じる。

そこでは、顧客を観察し、顧客が気づかなかったニーズを発見し、解決策を図る、あるいは新たな技術・ノウハウを顧客の困りごとにあてはめて事業を検討するようなプロセスが主流である。

イノベーションは素晴らしい。しかし、模倣されるのも時間の問題である。世界銀行の調査によると、50年前は模倣者が市場に参入するのに20年くらいの期間を要したが、徐々に短くなり、20世紀の終わりのころには1年ちょっとという期間にまで短くなってきている。また、イノベーション体現者と言われるアップルやグーグルも模倣をしながらイノベーションを生み出したといわれる。

スタートアップ企業や先進的技術を導入した企業が市場から好評を得ている事業領域において、後から参入した企業が模倣し、何らかの知恵や付加価値をつけて事業の差別化を図っていくというのも結果的に重要なイノベーションとなり得るということである。特に大企業の場合は、供給能力も高く、市場規模が大きくなる中で優位性を発揮できる領域も出てくる。当然M&Aも意識する必要がある。新しいサービスに不満のある顧客を深く洞察することで、模倣からのスタートであっても新しいビジネスチャンスは見つけられる。

かつて、日本企業は物まねが上手であった。そして、日本企業の物まねの上手さをシステム化してアメリカはベンチマーキングという概念を生み出し、一世を風靡した。日本にもそのブームはあった。しかし、最近日本ではあまりベンチマーキングということばを聞かない。他から学ぶことと新しいことを生み出すことを別物で考えているように見える。もしかすると、物まねやベンチマーキングを忘れた企業がイノベーションに苦労しているのではないだろうか。

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