コンサルタントの本音

◆社員満足度の満足とは?

2015年12月

「CS(顧客満足度)のためにはES(社員満足度)が必要。ES無くしてCS無し。」という話をよく耳にする。また、病院や介護施設など離職率の高い職場では、ESを高めて職員の定着率を維持することに苦労している。果たして、ESを高めればCSを良くすることができるのだろうか。ESを高めて離職率を低くするというのは本当にうまくいくのだろうか。

まず離職率とESの関係を見てみよう。不満を解消すれば離職率は改善すると考える経営者は多い。そこで辞める人からその理由を情報収集し、不満解消の対策を取ろうとする。しかし、明らかにおかしい面を是正するならともかく、個別の離職理由に焦点を絞ると、不満なく組織を支えている人に新たな不満の種をまいてしまうリスクがある。同時に、不満を言えば解決してもらえるという受け身の姿勢を助長し、解決されないと不満を持つようになる。そうなると離職率は下がらない。

離職率を下げるには、不満を解消するより、多少の不満があってもそれ以上に大事なことを意識できるようにすることが重要だと考えてはどうだろうか。たとえば、今の経験が次にどう繋がっていくのか見通しが立つようにすることも重要な要素となり得るだろう。今後のキャリアアップに繋がる環境に自分は置かれていると思えるように。そのようなES対策であれば、すべての人にとって意味のあるものになる。

次にCSとESの関係を見てみよう。サービス業など顧客との接点部門が価値を生むケースでは、接点部門の人のサービスマインドや意識・行動が、お客様の満足度を高める可能性は高い。したがってESを上げるとCSを上げるという相関関係は成立しそうだ。不満を解消しても、マインドや意識・行動は変わらないので、不満の解消に焦点を絞ることはないだろう。ここで大事なのは、サービス提供によりお客様が喜ぶ顔を見たり、「ありがとう」と言ってもらえたりといった対応が、周りから認められ、職場で尊重されて他の社員から評価されたり、期待に応えられたと感じられることである。さらにその先にもっとやりがいのある仕事が待っていることが見通せていて、それにチャレンジしたい、そのために今、頑張りたいという気持ちになることが大切である。

このように満足と言うよりも、この組織にいることが自分にとってどのような意味や価値があるのかを肌で感じられ、自らのキャリアや生活について先の見通しが立つことが離職率の低減やCSの向上につながるのではないだろうか。ESを満足という言葉だけで片付けてしまうと、かえって組織的な混乱を招くリスクがあるので気をつけたい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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