コンサルタントの本音

◆社会貢献を事業に生かす

2015年10月

新規事業開発において、リーンスタートアップの概念が普及してきていることはこのコラムでも紹介した。リーンスタートアップは、立てた仮説を顧客との対話の中から検証・発展させることが重要である。また、イノベーションを生むためにも、顧客の観察や対話から本質的な課題を導き出すことの重要性が語られている。課題やニーズをより深堀りするにあたり、もし、あなたの会社で社会貢献活動を行っていたとしたら、ぜひそこに着目することをお勧めする。

社会貢献活動、CSR活動自体が話題に上ることは少なくなっている。社会課題を解くことが新事業アイデアの一つとなっていることから、貢献ではなく事業として検討されるケースが多いことも要因の一つである。

もともと社会貢献活動は、事業に直接の貢献が無くてもいくつかの点で会社にとって間接的な価値をもたらすと言われていた。優れた活動そのものが誇りであり、会社に対する信頼を高める大きな礎となって社会や顧客からの信頼醸成、ブランド醸成につながる。さらに、社会貢献活動に従事した当事者にもメリットがある。ひとつは、社会貢献活動に参加することで、物事を動かす能力を早く身につけることができる。既存の事業に比べるとリソースが足りないため、企画・実行などあらゆることを任されるケースが多い。そこで計画の作り方、関係者との調整、実行に向けてのリーダーシップといった能力を高めることができる。また、社会の中で恵まれていない人やそれを支援する人との関わりは、年齢の有無にかかわらず自らのあり方を考え直すきっかけになる。

新規事業を立ち上げる際に、これまで取り組んできた社会貢献活動が忘れられているとしたらもったいない。イノベーション的な新規事業開発の立ち上げには、社会貢献活動での体験がモチベーションのよりどころになる。新規事業開発に向けた想いが深まり、当事者として成功させたいという意欲が高まる。また、事業開発の際にインタビューすべき相手とすでに交流していたり、社内にインタビューすべき相手と関係を持っている人材がいる場合も少なくない。これは会社としての大事なリソースである。

せっかくの社会貢献活動を「事業とは別物」として考えていないだろうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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