コンサルタントの本音

◆組織風土を規定するもの

2015年6月

経営者は自らの組織の弱さをどうやって強めていくべきなのだろうか。弱さの背景には、リソース不足がある。経営リソースには、人、モノ、金、情報などがあるが、人材のスキル、経験、ノウハウ、視野、意識などに弱さがあると経営者が感じているケースでは、当然のことながら人材育成を強化することによって組織の弱さを補おうとする。

しかし、人材を育てる、あるいは育つプロセスがしっかりできていないと、むやみに人材育成に費用を投入しても効果は期待できない。一方で、そんなに人材育成にお金を投資していなくても人が育っている組織がある。そういう組織で人が育つ要因の一つに組織風土がある。仕事をしているだけで一人ひとりの行動習慣の基礎が良い形で形成されるのである。

研修を通じて組織風土を変えていこうとチャレンジする組織がある。できないわけではないが、「組織風土を規定するものは何か」ということをよく意識しなければならない。それは、経営者やその下のマネージャーが何に関心を持ち、何を評価しているか、どのように周りとコミュニケーションしているか、何を基準に意思決定しているかなどが挙げられる。組織風土を変えることは簡単ではない。

組織風土を変えようとした場合に大事なことは、多くのメンバーがどのような組織風土にしていきたいかのイメージを共有することである。その上で、期待する意識の持ち方や取るべき行動のハードルを高くしすぎないこと、取るべき行動を実践した人がきちんと評価されること、取るべき行動を取らなかった人へ適切な注意がなされること、上司や幹部がそれを見ること、さらに言うと我慢して続けることである。同時に仕事のやり方やプロセスが適格に修正されることなど、一貫性を持った持続的な活動が必要になる。また、現場の人、マネージャーの人、それぞれの役割に合った研修の設計も必要になる。

このように組織風土を変えて行くには総合的な設計、企画を行うことが必要となるが、これは非常に難しい。だからトップや幹部が変わると、これまでのやり方が踏襲されず、トップや幹部が以前所属していた組織の実践方法をそのまま持ってくることがまかり通ったりする。展開のスピードは速いかもしれない。しかし根付くかどうかはわからない。トップや幹部にも「組織風土を規定するものは何か」を充分理解し、意識していただく必要があるのだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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