コンサルタントの本音

◆事業開発プロセスに加えるもの

2015年5月

経営学の大家ヘンリー・ミンツバーグは、「戦略には分析型と創発型がある」としている。分析型とは、市場を分析して自社の強み・弱みを整理し、リソースをどこにどのように投入し事業を成功に結びつけるのかを論理的に検討し、実行していく方法と言える。一方創発型は、事業について一定の方向性を示した上で、現場の創意工夫による小さな成功の積み重ねによって事業を発展させる方法と言える。一般的に前者は本社主導、後者は現場主導といった説明も加えられ、戦略がうまくいかない原因のひとつとして、どちらか一方に偏り過ぎていることがあり、その場合は、もう一方の戦略構成方法を強化するべきである。

分析型、創発型のいずれの方法でもあっても、戦略を立てるには、自社の存在意義や将来の方向性を示すミッションやビジョンが必要である。どの山を登るのかを決めるのはミッションやビジョンにあたり、最も適切な山の登り方を考えるのが戦略にあたる。そして、ミッションやビジョンには「なぜ」への回答が必要である。

「なぜ」を考え、ミッションやビジョンを明確にするために最も大切にしたいのは、「想い」である。冷静に分析しただけでは生まれて来ない感情的側面である。ロジックだけでマネジメントを行っていると、このあたりの感覚がつかみにくい。事業の方向性が示され、皆が同じ方向を向いて、納得感を持って仕事をするにはビジョンが必要であるということを論理的に理解するだけではうまくいかない。そのビジョンにどれだけの想いが込められているのか、心の底から実現したいと思っているのかが重要であり、その想いが伝わって全員の共通した想いとなった時に、はじめて妥当な戦略が効果的に検討されるのである。

事業の新規立ち上げも同じである。あなたはその事業を通して、誰にどのような喜びを与えたいのか、どのような不都合を解決したいのかを論理的に分析するだけではなく、何としても解決したいとか、解決することがわくわくする、といった気持ちが必要だ。最近では、リーンスタートアップという形で、事業を立ち上げるプロセスがあり、経験に裏打ちされたプロセスが紹介されている。そのプロセスで成功を導くためにも感情の部分を大事にしたい。果たして貴社の新事業立ち上げプロセスはそういう感情を大事にしているだろうか。もし研修としてプロセスを学ぶのであれば、自ら「なぜ」に応える場の設定が必要だ。ぜひ、わくわくしていただきたい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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