T氏のすべらないコラム

◆キャラが立ちすぎて

2014年9月

プロ野球読売ジャイアンツの応援歌「闘魂こめて」と阪神タイガース応援歌「六甲おろし」はともに古関裕而作曲だ。プロ野球草創期からのライバル球団だから、落語家の川柳川柳(かわやなぎ せんりゅう)師匠によれば「節操のない人だねぇ」となるが、早慶両大学の応援歌作曲もこの人、高校野球の「栄冠は君に輝く」もそうだから、第一人者として「頼まれれば平等に」ということだったのだろう。

その「闘魂こめて」と「六甲おろし」、球団ファンの愛着度ではどうも「六甲おろし」に軍配が上がりそうだ。これは巨人V9時代、大阪の人気ラジオ番組が盛んに「六甲おろし」を流してファンに浸透させたのに対し、「闘魂こめて」の方は今でこそJR水道橋駅で流されるが、当時はジャイアンツ祝勝会でも別の歌が歌われ、ファンに愛されていたことにも起因すると言われる。その別の歌とは――アニメ「巨人の星」の主題歌「ゆけゆけ飛雄馬」だ。

今でも剛力彩芽と共演するCMでおなじみのこのアニメ、原作は少年マガジンに連載されていた劇画だが、同じ原作者による「あしたのジョー」が不朽の名作と評価されるのに比べ、登場人物のキャラが立ちすぎてかお笑いネタにされることが多いようだ。中で原作連載時からのお笑い担当キャラは主人公星飛雄馬の親友伴宙太の父大造で、いつも羽織袴、サヨナラ本塁打をコンチハと言い間違えたりしていた。
このサヨナラ本塁打、言い得て妙だが、英語では good-bye home run とは言わず game-ending home run あるいは game-winning home run となる。

お笑い担当の大造に対し、まさに頑固一徹の飛雄馬の父一徹は元巨人の選手だったが、戦傷のため引退を余儀なくされ、かなわなかった夢を息子に託し、幼児期から野球の特訓をするという設定だ。
これは、米国映画「フィールド・オブ・ドリームス」に通じるものがある。主人公の父親は元マイナー選手、メジャー入りを果たせなかった夢を息子に託すが、野球をやらされることに反発した息子は家出、その後父親が死ぬまで会うこともなかった。そして中年となったケビン・コスナー演じる主人公がトウモロコシ畑を歩いていると、突如聞こえる「それを造れば、彼が来る」という声、その声に導かれて彼はトウモロコシ畑を切り開き、野球場に造りかえる。そこに天国から現れる往年の名選手たち、「それを造れば、彼が来る」が実現する――かつて米国バージニア州政府が工業団地を造ってIT企業を誘致するプロジェクトを立ち上げた時、調査を委嘱されたコンサルタントが結果をプレゼンした時の第一声がこの台詞の引用――"If you build it, he will come."――だった。こちらはキャラよりも台詞が立っている。

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. 「巨人の星」で飛雄馬のライバルの一人となるアームストロング・オズマが所属していた大リーグ球団は?
  2. 英語で inside-the-park home run は日本語では?
  3. 「フィールド・オブ・ドリームス」原作小説の題名にもなった八百長事件で追放された1910年代の大リーグ選手は?

先月のクイズ正解

  1. 角野卓造
  2. 空飛ぶモンティ・パイソン
  3. ナオミ・ワッツ

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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