コンサルタントの本音

◆リーダーの育成

2014年2月

先日、メイヨークリニックの価値創造部の副部長と話をする機会があった。メイヨークリニックは、クリニックと名乗っているが、アメリカ合衆国ミネソタ州ロチェスター市に本部を置く従業員6万人の大規模総合病院である。彼らは、創業時代の患者の声を最優先するという価値観"The needs of the patient come first. "を大事にしているため、巨大組織になってもクリニックという看板をそのままにしている。この創業時代からの価値観を大事にするリーダーの育成をどのようにしているのか、と聞いたところ、二つの答が返ってきた。

一つは、価値観に合わない人材を採用しないことが前提であるが、入職後すぐ、その後も機会あるごとにメイヨークリニックの設立から現在に至るまでのストーリーを繰り返し上司や幹部が語ることでDNAを継承している。

もう一つは、自分の担当・専門分野ではない組織の課題を提示し、その問題解決の実践を通じてリーダーシップを育成している。リーダークラスであれば、部門内の自分の仕事以外の課題や部門全体の課題、マネージャークラスであれば、部門間を横断する課題や本来なら本部や本社の専門部署が解決すべき課題などが提示され、上司のアドバイスを受けながら、委員会などで進捗報告を行うなどのプロセスを通じて問題解決の手法を理解していく。そのプロセスに沿って事実を集めたり、知恵を集約するために回りを巻き込んだり、これまでにない発想で解決策を検討したり、あるいは、簡単な実験を通じて効果を事前に評価し、ある程度の投資を呼び込む結果を出したりしていく過程を通じてマネジメントを学習する。当然ながらその際に価値観を判断基準にしているかなどがアドバイスされ評価される。ポイントは「自分に経験がない分野」であるということ。

さらに、メイヨークリニックでは、自らの問題解決手法をシックスシグマのDMAICを参考に作成し、その方法を研修という形で多くのメンバーに学ばせている。会社や組織が一つの問題解決手法を同じように学び共有化していることも重要なポイントである。そして早い段階でそれを活用し、実績を出している。日本でも製造業を中心にQC七つ道具を学び問題解決を経験しながら成長する育成が競争力を高めていた。しかし、製造業以外で普及が十分ではなく、また小集団活動が形骸化してしまって、問題解決、改善が弱くなった企業が目立つ。

業種によっては改善より改革ということで、改善を二の次にしているケースもある。果たして改善もできない組織が改革できるのだろうか疑問が残る。改善の行き過ぎを是正するために改革を目指すべきでないのか。トヨタの元幹部もトヨタの経営者は会社全体の問題解決をしているのだ、という話をしていた。リーダーはこれまでの発想だけでは解決できない組織の問題を解決することが求められる。その多くは今まで経験したことのない問題である。だからこそ、専門でない課題を解決する訓練がリーダーの育成にとってとても重要になってくるのである。

従って、組織の問題がマーケティングにあったり、戦略の立て方にあったりするのであれば、まずはリーダーがそれを学び、解決することを通じて成長する場を作ることが重要なのだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ページの先頭へ戻る