コンサルタントの本音

◆肝心なことは教えない戦略研修

2013年12月

企業研修では、幹部候補生に経営戦略や事業戦略の策定の仕方を教えている。日本でも著名な先生が指導しているケースも多い。なのに、なぜ日本は「戦略が弱い」と言われているのか。特に製造業では「技術で勝って、事業で負ける日本企業」などと揶揄されている。研修では戦略を成功させることはできないのだろうか。

一つの要因は、日本の戦略教育がアメリカの教育の影響を受けたことが考えられる。かつてのMBAで教えていたような、市場分析、競合分析、経営資源分析など分析をしっかり行い、意図した戦略を展開することを一生懸命勉強し、その通りに行っている。しかし現実は分析通りに行かず失敗するケースである。もう一つの要因は短期志向である。短期の財務成果を出すことに焦点を置いて目標設定し、その達成のために何をするのかという視点で対策を検討することを「戦略策定」としているケースがよく見られる。財務目標が先にあり、それからビジネスモデルを考え、実行するのは長期なら出来ても短期では難しかったりする。

今は、仮説検証型や創発型の戦略が重要である。もちろん意図してビジネスプランを策定するのは大事である。立てないと行動しないからである。しかし、行動したら想定どおりに目標が達成できるほど甘くはない。行動すると、調査分析したどの仮説が正しく、どれが間違っているかが判る。それを基に戦略や行動計画を修正していく必要がある。また、現場を回っていると、異なったアイデアやちょっとしたいいヒントに触れることがある。そうしたものこそが真のビジネスニーズだったりする。それを基にビジネスプランや戦略を修正、変更していくことで、最終的に結果が出るようになるケースが多い。

戦略研修は期間が決まっている。また、ビジネスプランを策定した人ではなく、実際に実行する上司や部下、関係者に問題があるケースもある。だから戦略研修だけでは成功まで導けない。これは戦略を教える指導者の共通したジレンマである。
戦略は「立てた後が大切」なのである。しかし、研修で教えられる範囲には限界がある。まさにコンサルティングだからである。だからこそ、研修後のフォローが重要になる。勉強のフォローではない、実ビジネスのフォローである。そこには実ビジネスの関係者も巻き込む必要があり、また、期間も研修のようにいつになったら終わりということではなく、ビジネスが立ち上がるまでフォローする必要がある。

結果を出すことにチャレンジしないと人材は育たない。そのためには個人ではなく、現場のステークホルダーを交えた戦略的な人材の育成を行うことに成功の秘訣がある。あなたの組織でも人材の「戦略育成」を考えてみませんか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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