T氏のすべらないコラム

◆大賞候補は数々あれど・・・

2013年10月

今年は、「今でしょ」「じぇじぇじぇ」「アベノミクス」に、何故か?合掌ポーズの「お・も・て・な・し」と、流行語大賞候補に事欠かない。中でも「じぇじぇじぇ」はNHKの朝ドラ「あまちゃん」で多用された驚きを表す方言だが、高度経済成長期にも「びっくりしたなあ、もう」「アッと驚く為五郎」といった驚き表現が流行したから、経済成長を目論む「アベノミクス」には吉兆かもしれない。

同じNHKで年初には大賞候補本命と目されたのが大河ドラマ「八重の桜」の「ならぬものはならぬ」だ。上から目線の上司に言われて辟易した向きもあろうが、そのせいか失速し、流行語とはいかなかったようだ。その代り?「クソ上司め、覚えていやがれ!」のキャッチコピーで登場したTBS系ドラマ「半沢直樹」の「倍返し」が下馬評では大賞本命だ。

「倍返し」は復讐宣言だが、アカデミー賞史上最多の11部門受賞に輝く「ベン・ハー」にも復讐を誓う表現がある。主人公ジュダ・ベン・ハーはローマ帝国支配下にあるエルサレムの貴族、支配する側の司令官として赴任してきた旧友メッサラと再会する。そこでメッサラは 'Judah, either you help me or you oppose me, you have no other choice. You're either for me or against me!' 「味方するか敵対するかどちらかだ。お前は敵か味方か!」と迫る。ベン・ハーの答えは 'If that is the choice, then I am against you.' 「どちらかしかないなら、君の敵になる」。二者択一を迫る choice、賛成を表す前置詞 for、反対の against 各々の使い方は生かせるところだ。その後反逆罪でローマ軍船の奴隷となる判決を受けたベン・ハーは 'May God grant me vengeance! I will pray that you live until I return!' 「神よ、復讐を!俺が戻るまでお前が生きていることを祈ろう!」と復讐を誓うが、メッサラは一言、'Return?' 「戻る?」つまり「やれるもんなら、やってみな!」――相手の言葉をそのまま語尾を上げて返す皮肉表現だ。

「ベン・ハー」は、イエス・キリストの磔刑を見たベン・ハーが 'Almost at the moment he died, I heard him say, "Father, forgive them, for they know not what they do." Even then. And I felt his voice take the sword out of my hand.' 「あの方が死の間際に、『父よ、彼等を許し給え、自分たちが何をしているか知らないのですから』と言うのを聞いた。そんな時でさえ。あの方の声で私の憎しみも消えたようだ」と述べて終わる。'Take the sword out of your hand.' とすれば 「そこまでだ」「もういいだろう」と制止する意味で使える。そんな声を振り切り、「100倍返し」の「半沢直樹」ラストシーン ―― やりすぎはよくないようで・・・。

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. NHK朝ドラから出た2010年の流行語大賞は?
  2. 「半沢直樹」で主人公が勤める銀行のイメージキャラクター役といえば?
  3. 「ベン・ハー」にエキストラ出演し、後に日本製スクーターの名前にもなったマカロニ・ウエスタンを代表するイタリア人俳優は?

先月のクイズ正解

  1. イエロー・サブマリン(英国では「エリナー・リグビー」と両A面)
  2. ジェームズ・ ステュアート
  3. 丸山(現美輪)明宏

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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