T氏のすべらないコラム

◆ビッグになると・・・

2013年9月

1966年、ジョン・レノンは、英国の夕刊紙インタビューで 'We're more popular than Jesus now.' 「僕たち(ビートルズ)は今やイエス(キリスト)よりも人気がある」と述べる。ほとんど反応はなかったが、発言から5ヶ月後米国で報道されるや、非難轟々、ビートルズのレコード焼き打ち集会が計画され、不買運動も起きる騒ぎとなる。

釈明会見を余儀なくされたジョンは、'I was just saying it as a fact and it's true more for England than here.' 「事実として言ったまでで、ここ(米国)よりも英国では実際そうなんですよ」と断った後、 'I just said what I said and it was wrong. Or it was taken wrong.' 「確かに言ったことは言ったし、それは間違いでした。あるいは間違って伝わってしまった」と、母国で問題にならなかった発言が米国で物議をかもした不満をにじませながらも謝罪している。少し変えて 'What I said was taken wrong.' とすれば、発言が誤解されたときに使える表現になる。

初代FBI長官エドガー・フーバーを描いた映画「J・エドガー」で、それと同じ頃フーバーが自分の伝記を書かせている記者に 'Who is the most famous man of the 20th Century thus far?' と問いかける場面がある。「これまでのところ(thus far)20世紀で最も有名な人物は誰か?」というのだ。フーバーがあるヒントを出すと、記者は 'Well, then Charles Lindbergh, sir.'「ああ、それならチャールズ・リンドバーグですね」と即答する。ヒントを出されて「わかった!」と言う場合の 'Well, then' も使える表現だ。英国でビートルズがキリストよりも人気とジョンが言った当時、米国では20世紀で最も有名な人物は初の大西洋単独横断無着陸飛行に成功したリンドバーグだった。映画は、この後リンドバーグの愛児が誘拐殺害された事件に入る。

そして犯人逮捕、裁判開始、その時の様子をフーバーは 'H.L. Mencken called this the biggest story since the Resurrection.' 「H.L.メンケンはこの裁判をキリスト復活以来最大の物語と称した」と、当時の米国を代表するジャーナリストの言を借りて説明している。この the Resurrection は聖書にある「イエス(キリスト)の復活」で、使う必要はないが、意味は覚えておきたい。日本語では「神武以来」(ほぼ死語だが)といったところか。

ビッグの象徴にイエスを持ってくるところは英米共通だが、ジョンの言うように、英米間でも違いはある。リンドバーグなど、日本では♪今すぐ Kiss Me♪となりそうだ。所変われば――会話には文化歴史の知識も必要だ。

今月のクイズ(正解は来月号に掲載)

  1. 1966年度全英シングル売上第1位を記録したビートルズナンバーは?
  2. 映画「翼よ! あれが巴里の灯だ」でチャールズ・リンドバーグを演じたのは?
  3. 「神武以来の美少年」と称された人物は?

先月のクイズ正解

  1. 竹中直人
  2. エクソシスト
  3. Beverly Hills, 90210

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ページの先頭へ戻る